スラスターチャン小学校のトイレ完成までの軌跡

コンポンスプー州サムロントンディストリクト。

高木があちこちにそびえたつ、カンボジアらしい風景の見られる地域です。

そのエリアにある、スラスターチャン小学校。

2023年3月25日、トイレの無かったこの学校に、ついに新しいトイレができました。

ジョイントプロジェクトの意味するところがお分かりいただけますように、記事をまとめてあります。お読みください。

 

切り株がところどころにある校庭。

この小学校で、500人の子どもたちが学んでいます。

メインで使われている2つの校舎。

その間がトイレ建設予定地。

こちらは、使われなくなった旧校舎。

実は、この旧校舎の先に2基のトイレがあります。

多分、新校舎を設立した時に、トイレも一緒に建設すればよかったのでしょうが、現存のトイレは、旧校舎の向こうにある200mも離れた場所にあります。

それゆえ、子供たちは、校舎裏の草むらで用を足すのが日常化していました。

校舎裏手には、蓮の花が咲く池があります。

この池は、いわゆる小便池。

魚もおしっこをしますので、生物学的に言えば、さしたる問題はないとも思いますが、人間としてのモラルを育てる学校教育の場では放置できない問題です。

まずは、トイレの設計上の相談から。

このプロジェクトを通して、ずっと、サポートしてくれた司書のソファット先生。

彼は、読み聞かせがとても上手なんです。

彼の存在が無かったら、このプロジェクトは実現していなかったかも。

こういう温かな愛情を受けて、ここの子どもたちは育っています。

そして、しっかり者のナビー先生。

このお二人がいてくれたおかげで、現場との交渉がスムーズにできました。

私も、前回のトイレ建設のときには、通訳を付けて行いましたが、今回は、たった一人でこういった交渉事ができるようになり、自分自身も進歩したなと思います。

そして、建設資材を購入。

最初のうちは、工員さん10人くらいが来て、一気に作業を進めていました。

レンガも相当な数が必要です。

見る見るうちに箱が出来上がっていきます。

し尿ますの穴掘り。

炎天下の中で、この作業を行うことが、どれほどのものか想像がつきますか。

ソックン校長も自らつるはしを握っています。さすがです。

これが、ジョイントプロジェクトのいい所。

わたしも、現場監督をしながら、飲み物の差し入れをしたり、細かいところをチェックしたりしながら、作業に参加します。

資材の領収書は、その場で決済。

学校までは、20㎞近くもあります。出来上がっていく様子がただただ楽しみで、毎回向かっています。

2000ℓのタンクが届きました。

タンクの土台もできました。

トイレに向かうところの段差も解消。

ソックン先生のアイディアです。

 

休み時間の日陰での談笑。

手洗い場の作業です。

ここは、子供の高さに合わせて作ってもらうように、注文を付けてあります。

こういうところに前回の経験が生きています。

そして、内部の造作。

日本の支援者の方々が、最後には完成したトイレを見に来ます。

「皆さんも、そのことを頭に入れて、カンボジアの誇りを持って取り組んでください。」

と工員さんたちには伝えてあります。

とにかくきれいな仕上がりを。

細かいところに目を光らせます。

配管の位置や高さも確認。

トイレ前に敷き詰める細かな砂利です。

ペイントが始まりました。

今の季節に似合ったいい色です。

このころ、私は、工員さんたちからはボスと呼ばれるようになっていました。(笑)

「仕上げはくれぐれも丁寧に頼みます。」

日本とのつなぎ役となって、手掛けた工事もほぼ終わりに近づきました。

 

タンクの屋根も後で設置します。

工員さんたち、ここでご飯を炊いて食べているんですよ。

ほぼ3人で、作業をしてくれているので、もはや我々はチームと言った感じ。

施工中のビデオをご覧ください。

作業賃金の支払いは、3回に分けて。(これも、前回の経験を生かしてこの形を取りました。)

手付け、中間、最終ですね。

ほぼ出来上がりました。

カンボジア式のトイレです。

一つだけ洋式便座。

低学年用。

高学年用。

ドアの取り付けも完了。

校舎の屋根に備え付けの雨どいとタンクがパイプで連結されているのがお分かりいただけますか。これは、雨季には、雨水を利用してタンクを貯水するというカンボジアでは定石の取水システムです。

裏から見たところ。

校長先生のアイディアで、ヤシの木の植林。

これが、トイレの年数と同時にどこまで育つか、良い記念樹となりました。

そうそう、タンクに水を送る動力のポンプ。

これは、イタリア製の高級機材。

校庭中央に掘ってある井戸から、毎分30ℓの水を高架水槽に送ります。

このトイレは、最低20年は、きれいに使い続けるつもりで建設しています。

3月中旬、完成チェックに訪れた私が細かな追加工事の指示を出しました。

それは、・・・。

①し尿ますの周りをしっかり煉瓦で囲うこと。

②ペンキの塗り残しを無くすこと。

③垂れ流しになっている手洗い場の排水を土中にパイプを埋設して、校舎わきに流すこと。

施工業務の推進は、相手側との駆け引きであり、こちらの要望はきちんと伝え、それでいて相手にはプライドをくすぐらせてやっていただくという心持ちが必要。

それには、相互の信頼関係がモノを言います。

 

そして仕上がったトイレの最終形がこちら。

支援プレートと男女のプレートを入れました。

25.March.2023、めでたく完成です。

出来上がったトイレは、使うのも維持管理するのもカンボジアサイド。

ですから、日本側がお金を出して、作ってあげて、日本の国旗を張り付けるではダメなんです。

いかにして、建設媒体そのものに、カンボジアサイドの主体性や誇りと言ったものを盛り込めるかが大事なんです。

建設を通して、人を育て、達成感を持たせる。

それゆえ、この建設には、校長先生をはじめ、先生方、子供たちにも関わってもらっています。

その子どもたちが、水道で手洗いをしている姿を見るにつけ、喜びが湧き上がってきます。

植物に水をあげる生徒たち。

そんな姿にも、この学校の子どもたちの心の優しさが現れています。

このスマイルに、心が癒されますよね。

最後に、この度、このプロジェクトに賛同して、快く出資してくださいました福岡玄海ライオンズクラブ様、お話をとりもってくださったペイイットフォワードの加藤様、そして学校関係者をはじめ、多くのご協力してくださった皆様方に心から感謝いたします。

 

このトイレ建設までの足取りについては、以下の過去記事をご覧ください。

(後記)

実は、私が、このプロジェクトを手掛けるきっかけになったのが、2022年5月のタヴィンさんというカンボジア人女性との出会いからでした。

タヴィンさんは、カンボジア国連PKOの職員です。

先日、そのタヴィンさんから、

「この小学校のトイレ建設には、いくつもの団体が視察に来ては、実現されないままこれまで来たけど、あなたたちはそれをとうとう成し遂げた。」

とのお話を頂きました。

私にとって、その言葉が何よりもうれしいことでした。


最後まで、お読みいただきありがとうございました。

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