カンボジアの人々の暮らしぶりに見る本当の貧困

カンボジアの生活

カンボジアの貧困の度合いについては、世界銀行(World Bank)などの国際機関が詳細な調査資料を発表しています。近年の具体的な統計データと現状は以下の通りです。

貧困率の推移(マクロデータ)

世界銀行の「Cambodia Poverty Assessment 2022」などによると、カンボジアの貧困は経済成長に伴い大幅に改善されてきましたが、近年は足踏み状態や格差の拡大が見られます。

  • 公式貧困率の低下:2009年に33.8%だった全国の貧困率は、2019年には17.8%へとほぼ半減しました。これにより約200万人が貧困を脱したとされています。
  • 多次元貧困率:収入だけでなく、教育・医療・生活水準(電気や水の確保など)を総合的に数値化した「多次元貧困率」は34.9%(2018年データ)に達しており、金銭面以外での貧困状態がいまだ根深く残っています。
  • 国際的な位置づけ:2015年に「低所得国」から「低中所得国」へと移行しましたが、国連による「後発開発途上国(LDC)」のリストには依然として含まれています。

都市部(中心部)と農村部の深刻な格差

カンボジアの貧困の最大の特徴は、首都プノンペンの中心部と、地方の農村部における著しい経済格差にあります。

首都プノンペンを訪れた人々が、「カンボジアは発展している、すでに途上国を脱している、ひょっとしたら日本は追い越されている。」などの感想をもつことがありますが、首都プノンペンにさえ、
主な課題としてスラム(非公式居住地)の存在、高い失業率、インフラ未整備などの数多くの問題を抱えています。

皆さんは、プノンペンの水道水が、蛇口をひねってそのまま飲めることをご存じですか?

これは、日本では当たり前のことでも、東南アジアではごく稀なことで、私の知る限りでは、これが可能なのは、シンガポールとプノンペンだけです。

このような「プノンペンの奇跡」といわれるような上水道のインフラ整備は、日本のODAによる計画的な支援により、普及率90%以上を達成した世界の国際協力史に残る金字塔といえます。

しかし、上水道が90%以上の高い普及率を誇る一方、下水道インフラの整備は大幅に遅れており、長らく「公共の下水処理場」自体が存在しませんでした。

下水道が整備されているのは、カンボジアの首都プノンペンにおける下水道の「下水処理率(実質的な下水道普及率)」は、都市全体で見ると約5%未満と非常に低い状態にあります。

そのため、各家庭の腐敗槽(セプティックタンク)を経てから、街中の合流式排水路を通じて周辺の湖沼や湿地帯へと流し、自然浄化に頼る方法が一般的でした。

昭和の日本のどぶ川に見られた臭いの伴った生活排水がそのまま町中に流れているという状態を想像してみてください。

雨季になれば、街中のあちこちで冠水し、その水が伝染病などを誘発し、健康被害に及ぶことさえあります。

また、都市部と農村部(地方の田舎地域)では、想像以上の生活格差があります。

これは、地方部に生活した経験がないと実感としては、わからないことかもしれません。

田舎では、プノンペンのように上水道が普及しておらず、多くの家屋がカメに貯水した水を使用しています。

この水で、お皿を洗い、シャワーを浴びる・・・、想像してみてください。

生活収入は主に手作業を伴う農業・畜産業に頼るほかはなく、しかもその多くが労働時間に見合わない定収入であるということが問題です。

カンボジアでは、お米は市販価格1㎏100円程度です。地方の農家がお米を大量に生産しても、その収入はとても少ないのが現状なのです。

社会的側面の課題(教育・健康・子ども)

貧困の度合いは、人々の健康や次世代の教育機会の喪失という形で具体的に現れています。

  • 教育の未修了:小学校(初等教育)の修了率は60〜70%ですが、中学校(中等教育)に進むと30〜40%にまで激減します。家計を助けるための児童労働や、家から学校への距離が遠いことが原因です。
  • 栄養不良と健康:貧困層を中心に子どもの栄養不良が深刻で、乳幼児死亡の大きな要因となっています。また、15歳〜49歳の女性の49%が貧血や栄養不良を患っているというデータもあります(2019年時点)。
  • 脆弱な子どもたち:特に農村部や都市のスラムでは、ストリートチルドレン化、最悪な環境での児童労働、さらには国外への人身売買の標的になるリスクがいまだに存在します。

近年、中国資本の工場が、カンボジアに誘致され、地方の貧困者の修了を支えている面は生活を支える手段になってはいますが、その労働条件は過酷であり、低収入・重労働が実態です。

2026年現在の工場労働者の最低賃金は、月~土のフルワークで210$(日本円で33,000円程度)となっており、決して十分な収入とは言えません。

また、親が労働に時間を費やすあまりに、子どもの教育やしつけがおろそかになりがちなことも地方部ではよく見られる問題でもあります。

日本の青少年がお金ではなくやりがいを求めて将来を描くのとは対照的に、カンボジアではお金を得ることが第一目的であり、やりがいなどは二の次のことにされてしまいがちです。

自分の家を持ち、車を手に入れる・・・、カンボジアの若者が真っ先に夢見ることですが、その先にこそ人生があることを彼らには考える余裕がありません。

実は、私が今、最も懸念していることが、この若者の人材育成という課題です。

10年後、20年後・・・、この若者たちが国を動かす力になっていきます。

夢を持たずに、スマートフォンでフェイスブックばかりを見ているカンボジアの若者たち。

私は、この若者たちの姿に、本当の貧困の実態を感じるのです。

何のために生きるかという、人生の自己実現がおろそかにされていることも、間違いなく貧困がその背景にあります。


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