前シアヌーク国王の功績

2022年10月30日

独立の父「シアヌーク国王」

Norodom Sihanouk(1922年10月31日 – 2012年10月15日)

カンボジア王族の息子として、カンボジアの首都プノンペンで生まれました。初即位は、祖父のシソワット・モニヴォン国王の崩御後の18歳の時でした。

その後、国王を退位して国家元首になり、幽閉されて不遇の時代を過ごしたり、再び国王になったりと波乱万丈の人生を送られました。

イギリスの歴史学者が語る人間像

1. フランスの保護を受ける若き王

2. 日本の監視下における絶対的君主

3. フランスの下での準立憲君主

4. 独立を勝ち取った国王

5. 退位し、自身の政党を結成した絶対主義者

6. ポピュリスト、独裁主義者、中立主義の指導者、国家元首

7. カンプチア民族統一戦線の指導者、民主カンプチア国家元首

8. 国家の救済者、クメール・ルージュやヴェトナムと反目

9.二度目の退位までは再び国王、その後2012年までは国王の父として

彼の国家元首としての多様さは、ギネスブックにも載っています。

フランスからの独立宣言

カンボジア国民からの絶大な人気は、前シアヌークの国王が果たした偉業にあります。

第二次大戦終結後、シアヌーク国王は、アメリカ合衆国を始めとする諸外国を訪問し、カンボジアの現状と独立を国際世論に訴え続けました。

しかし、インドシナの領有権を手中にしていたフランスは、その既得権を容易には放棄できずにいました。

これに対してシハヌーク国王は「完全に独立が達成されるまでプノンペンには戻らない」と宣言したことから、カンボジア国民は勇気づけられ、独立を求めるための反仏デモが各地で行われました。

国王の強い姿勢に、国力が弱体化していたフランスは、1953年11月9日カンボジアの完全独立を認めます。ここに、新生「カンボジア王国」がシアヌーク国王の元に誕生しました。

こうして、プノンペンの王宮に凱旋したシハヌーク国王は、「独立の父」として国民から絶大な尊敬を受けるようになったというわけです。

国民への敬愛を忘れない謙虚な生き様

王族の血を引くシアヌークは、国王としても、国家元首としてもカンボジアの国家建設にかかわり、彼の一生はまさに激動の時代を生き抜いた稀有な人生と言えましょう。

そんな中でも、彼は誰からも支配を受けない国家建設のために尽力しつづけました。

そして、国民の生活の向上を強く願っていました。

残された彼の映像を見るにつけ、国民をレスペクトし、人々を大切にしていることがわかります。

2012年10月15日に北京にて、心不全のため89歳で亡くなると、航空機でカンボジアに亡骸が戻されると、約120万人の国民が空港から王宮までの10㎞以上もの道が民衆で埋め尽くされ、出迎えられたそうです。

今もなお独立の父として、カンボジア全国民から敬愛を受け続けていることがお分かりいただけることでしょう。

ちょうど、昨日の10月15日はシアヌーク元国王が亡くなられてから、7年目にあたる日でした。

国内のテレビ局では、シアヌーク国王の過去の映像を一日中放送していました。

民衆の心をつかむことに長けた才能

国王や国家元首など、数々の地位に着いたシアヌーク元国王ですが、文化人としても、多才さを発揮しています。

彼は、多数の映画作品を残し、民衆に何かを訴えかけています。それは、クメール王国としての誇りであり、何者にも侵されないカンボジアとしての独立を願う心であったように思います。

日本軍の将校役として、自らが主演している「ボーコーの薔薇」と名の映画。

こんな題材からもフランスからの独立を願う彼の想いをくみ取ることができます。ひょっとしたら、1945年にフランス軍をインドシナから追いやった日本軍に自らのヒーロー像を重ね合わせていたのかもしれません。

彼が、ベトナム戦争時代に、アメリカの傀儡政権であるロンノル政権に国外に追いやられたことからも、生涯アメリカは相いれられない相手であり、そのアメリカと対峙した日本に思い入れしていたのだと、私は彼の心を読み解きます。

平和な現在のカンボジア

プノンペンのリバーサイド、シソワスキー通り。

2019年10月15日、何事もなく人々が通り過ぎていきます。

プノンペン王宮の前には、ハトがたくさん集まってきます。

ご存知の通りハトは平和の象徴です。

平和に暮らす子どもたち。

過去の歴史や戦争のことを全く知らない世代です。

この子たちの未来は今作られています。

シアヌーク国王の命日を示すプレートの前を一輪のハトが飛び立っていきます。

私は、その瞬間にシアヌーク前国王の願いと重なって見えました。

あらためてご冥福をお祈りいたします。


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