カンボジアの縫製工場の継続危機に対する考察

2020年6月23日

縫製労働者の生活

私は、何十万人もが働くカンボジアの縫製工場の近くに住んでいたこともあり、彼女たちの生活を日常的に目にしてきました。

朝何時に出勤して、何時に終業するのか。
どんなものを食べて暮らしているのか。
週一日の休みの日にはどんなことをして過ごすのか。
暮らしぶりはどうか。

など、自然と見えてきます。

このような経緯で、当団体でも、社会支援として、生活費が常時不足している彼女たちの中から、刺繍技能に長けた人材を募り、出来上がった刺繍作品を日本の方々に紹介してきました。

H&Mで衣料品が安く手に入る理由

下は、皆さんにもなじみの深い、安さを誇るH&Mのサイトです。

H&Mメンバー限定価格

なぜ安値で購入できるのか、その理由がカンボジアの労働者にあったことを私は、ここで実感したわけです。

今では、H&Mやユニクロなどの製品を見るたびに、それを縫製する労働者の姿がちらついて見えます。ユニクロの工場は、中国やベトナムが多いですが、カンボジアにも4つの工場があることが情報公開されています。

このことについては、過去の記事で書いています。下のページをお読みください。

カンボジアの平均月収

ある縫製工場で働く人の生活

カンボジアの縫製工場労働者の身分の危うさ

縫製工場労働者に輝かしい未来はあるのか

労働者の最低賃金は2020年は190$に

まずは、2020年1月より、カンボジアの工場労働者の給料が引き上げられたことのニュースから。

2020年の縫製・製靴業ワーカーの最低賃金は月額190ドルに

今年の賃上げは、過去の値上げ幅から見て、最低の4.3%であったと報じられています。

2019年 182$  → 2020年 190$

当初は、2020年には、月額200$になるのではないかとみられていたのですから、労働者サイドでは、やや期待外れといったところだと思います。

こちらにいらした皆さんも、月給20,000円に届くか届かないかという現実に驚かれる方が多いです。

EUの特恵関税の廃止が決定

実は、カンボジアが現在国際的に抱えている問題として、EBAの問題があります。

これまで、EUは、後発開発途上国対象に、輸入品への関税を課さないことで、その国の産業を促進するという支える支援の一つの形をとってきました。

ところが、以前から言われていたこの関税優遇制度を撤廃することがいよいよ現実的な問題になりました。

欧州委、カンボジアへの特恵関税適用を一部停止へ

具体的には、衣類と履物、旅行用品、砂糖への特恵関税を事実上停止することが採択されました。

理由は、カンボジアで未だに残る人権侵害が改善されていないことであり、ある意味、政治的な問題が絡んでいます。

当然、関税がかけられれば、製品は値上げされ、売れなくなります。

生産者の減収になれば、労働者は解雇されることになります。

追加の打撃はコロナウィルス

ここに来て、コロナウィルスの問題が出ています。

例を挙げれば、日本でもたくさんあるH&Mは、カンボジア国内に50の工場を持っています。

ほとんどのサプライヤーは中国にありますから、コロナウィルスの羅漢者が出ている地域では生産活動がほぼストップしています。

つまり、カンボジアでは、今、縫製しようにも原材料の生地が入ってこない状況にあります。

こちらでは、操業時間を短縮するなどして対応していますが、これもいつまで続くかわかりません。

 

労働者たちにとっては、生活の見通しに暗雲が立ち込めている状態と言えます。

もちろん国内の経済に与える影響も計り知れません。

これまで、年々経済成長を続けてきたカンボジア。

現在の状況は大変厳しいと言わざるを得ませんが、状況を見守りつつ、自分のできることを粛々と行っていこうと思います。


最後まで、お読みいただきありがとうございました。

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