今後のカンボジア支援の在り方についての考察

2023年9月18日

海外支援に関心を持たれている皆様。

そして、ボランティアマインドにあふれる方々。

今回の記事は、そんな方々にお読みいただき、自らの支援へのかかわり方の参考にしていただきたい内容です。

日本のODAに学ぶ

まず、日本のカンボジア支援の取り組みをご紹介させていただきますね。

カンボジアの首都プノンペンから、国道一号線をベトナムのホーチミンに向かって進むとメコン川を渡ることになります。

この場所は、川幅が広くて、かつては人や車を運ぶ渡し船が往来していたところでした。混んでいるときには、5時間ほども待つ必要があったほどです。

ですから、地元の人々がプレイベン州やスバイリエン州に行くときには、ほんの100㎞の移動に一日がかりだったのです。

そこへ、日本のODA(政府開発援助)が名乗りをあげました。 

このプロジェクトは、足掛け10年にわたる、支援額127,000,000ドルに及ぶ日本最大のカンボジアへの無償資金協力でした。

こちらは、ドローンからの空撮ビデオです。いかに巨大な橋かがお分かりいただけます。

https://youtube.com/watch?v=XOUo37iS8O8%3F%26wmode%3Dopaque
つばさ橋の全景

しかし、実際のところは、工事は難航しました。同国で最長となる2,215mの橋をこの場所に設置することは、図面通りにいかないことばかりだったのです。

  • メコン川の水流が想像以上に強かったこと
  • 乾季の間にしか工事を進められなかったこと
  • 数千の地雷の撤去作業を合わせて行ったこと

それでも、担当した日本のチームが結束して、このプロジェクトをやり遂げました。

巨大な橋でありながら、美しいフォルム。

安全性と耐久性を実現する技術と工法。

橋の両端に設置されているカンボジアと日本の絆を象徴するモニュメント。

この一本の橋の建設が、カンボジア国民に与えた恩恵には計り知れないものがあります。

本当の支援の一つのモデル

実は、こののODA取り組みの過程で、特筆すべき点が2つあるんです。

一つは、現地の従業員を雇って工事が進められたこと。

もう一つは、技術供与を併せて行ったこと。

この2つには、とても大きな意味があります。

それは、橋を作って与えるだけではなく、自分たちの力でメンテナンスを行い、維持管理していくことを含めて支援している点にあります。

カンボジア政府は、このプロジェクトに対して、同国で最も流通している500リエル札にこのつばさ橋(2014年完成)やきずな橋(2001年完成)を印刷して、感謝の意を表しました。

右下をご覧ください。カンボジアの通貨に日本の国旗が刻み込まれているのがお分かりいただけると思います。

現地では、日本とカンボジアの友好を喜ぶ歌まで作られています。

https://youtube.com/watch?v=YI-BteK-hOI%3F%26wmode%3Dopaque

このことは、日本人として、大変誇らしいことですよね。

今後のカンボジア支援の在り方

さて、私たちは、これまで『カンボジア支援』として、

・不要になったものを贈る。

・学校を建設する。

・井戸を掘る。

などの取り組みを個人やNGOで行ってきました。

しかし、これからは、もう一歩深く考えていく必要があります。

それは、その支援が、10年先、20年先に本当のカンボジアの力になっていくかどうかを考えた上で行うことです。

例えば、不要になった鍵盤ハーモニカを贈ったところで、それを指導する教師がいなければ、無用の長物になってしまいます。また、モノを贈ると、自国の産業が育たなくなるという側面にも目を向ける必要があります。

学校を新たに作っても、指導する教師がいなければ、子供が育ちようもありません。また、地域や学校が「どうせ、日本がお金を出してくれる。」というような、日本におんぶにだっこ的な考え方を持ってもらっては、自分たちでやろうとする自立心の芽を摘んでしまうことにもなりかねません。

井戸掘りについては、別記事にも書いておりますが、ヒ素中毒等の問題を引き起こした過去の反省から、水質検査まできちんと行った上で行うことが必要です。

いずれにしても、カンボジアは日本のものではありません。この国は、カンボジア国民にとっての大地であり、将来的には自らの手で国を作っていく方向に向かわなければなりません。

新しい形のクラウドファンディング

2020年、まだコロナ蔓延の真っ最中だったころ、ある地方部の小学校で、トイレの増設をしたいという要望が出されました。

コンポンスプー州トロペインコック村にあるPrey Boeung Primary School。

700人の学校に、17名の教師。使えるトイレは、たったの4つだけ。

子どもたちは、我慢したり、裏の茂みで用を済ませたり・・・、健康上、衛生上、問題がありますが、現状では先生方も黙認するしかありませんでした。

古いトイレは、下のように朽ち果てて放置されていました。

私は、支援に当たっては、まず自分たち地域のコミュニティにトイレ建設について、どれほどの想いがあるのかを学校側に問いかけました。

それは、日本側でお金だけを出して支援するという従来の形の支援では、カンボジアの地域のコミュニティが育たないと考えるからです。

まず、自分たちの手で何とかしようと動き出していただく。

そして、その上で、日本側としても、最大限の協力をさせていただく。

これが、彼らのためになる支援だと考えたからです。

一見輝かしく見える支援プレート。

しかし、本当にカンボジアのためになってきたかを、今問い直すときが来ています。

この朽ち果てたトイレを見て、改めて思います。

きれいに維持管理していく決意を、カンボジア側に持っていただく必要があるのです。

そのためには、自分たちの力でやる機会を奪うような支援は、これからは控えていかなければならないと思うのです。

ひょっとしたら、先生方や子どもたちの衛生観念や環境への意識改革もしていく必要があるかもしれません。

学校長のLim先生とも、以上のことを十分ご理解いただいた上で、我々の草の根支援活動は、動き出しました。

まずは、400~450ある生徒たちの各家庭に、資金協力を呼びかけました。

貧しい村でのことですから、それほど大きな金額は集まらないことは承知の上です。

でも、例えば、一家庭で2,000リエルも負担してもらえば、800,000~1,000,000リエル(800$~1,000$)のお金になります。

トイレの新設と補修には、約4,700$のお金がかかります。

私たちは、足りない分を支援していけばよいのです。

この形での取り組みの方が、自分たちの手でやったという誇りが持てるし、何にもまして、地域の学校教育への関心度が高まります。

カンボジアでは、家庭の教育力が低いことも課題の一つに挙げられていますので。

トイレが出来上がった暁には、私の団体の名前を刻む必要はありません。

学校の先生方、子どもたち、地域の力で作り上げたと名前を刻んでほしいと強く願ってのことです。

そして、2021年10月、クラウドファンディングの呼びかけが日本の多くのご支援者の心を動かし、新しいトイレは完成しました。

プレイボン小学校は、今では、自分たちの力で、学校の教育環境を良くしようと先生方が一丸となって取り組んでいます。

数年前に比べて、この学校は、先生方の意識改革も進み、見違えるようにきれいになりました。

独りよがりではなく、共に取り組み、喜びを共有し合う支援。

これが、今、私たちJECSAカンボジアが考える支援の在り方です。


最後まで、お読みいただきありがとうございました。

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