【170万人の虐殺】ポルポト政権が3年8カ月の間に行ったこと

2024年3月25日

農村部への強制移動の先に待っていたものは

ポルポトは、こうして彼らからすべてを奪い取り、プノンペンに住む人々を農村へ追いやりました。

3つの隠された歴史検証

1 当時のプノンペンには、ポルポト軍の迫害から逃れてきた地方の人々がロンノル軍と共に流れ込んでいて、通常の2倍から3倍の人々に膨れ上がっていました。もちろん、すべての人を賄う食料はありませんでした。その証拠に、プノンペン中の犬が消えたと言われています。食用にされたんですね。それほど、食料に困窮していたことがわかります。
2 ロンノル軍の兵士が民間人に成りすましているかもしれないと疑心暗鬼にかられたポルポト軍は、疑わしき人を次々と捉えて、トゥールスレン収容所に連行しました。一般人も、知識人を撲滅するために、手がきれい、眼鏡をかけているなどの理由で連行されました。もちろん、ひとたび収容所に連れていかれたら、生きて戻ることはありません。プノンペンにいた何百万人の市民を殺す人間と労働させる人間に選別したというのが実態です。
3 ポルポトは差別のない社会を目指していました。頭を使って富を築くのは堕落した思想を持っているからだと考え、彼らを農村で労働させることによって再教育しようとしたのです。教育と言うと聞こえがいいようですが、実際にはオンカー(上の者と言う意味)の監視下に置かれ、抵抗したり文句を一言でもいったものは、直ちに処刑されたと言います。空腹に耐えきれなかった子供が監視の目を盗んで、一本のバナナを口にしたのを見つかって、その場で殺されたというような話も、生き残った人の証言から後からわかりました。公平に貧しくあるのが理想であり、自分だけ利益を得ようとするものは悪であるという考え方が根底にあることがわかります。

炎天下の歩行

下は、私が親しい友人から直接聞いた話です。

この女性の母親は現在75歳。プレイベン州のセントラルからバッタンバンまでの380kmを、数か月かけて、しかも裸足で歩かされたそうです。彼女は、当時30歳で、まだ体力があったから、何とか歩き通すことができたと語ります。

当時は、乾季の真っただ中で、しかも4月と言えば1年で最も暑い時期です。

当然、途中で行き倒れる人が多く出ます。

どのみち労働力にもならないと考えたポルポト軍は、歩くのを拒否した人をその場で射殺しました。

病気の人や歩けなくなった老人は、そのまま置き去りにされたそうです。

こういった一連の非人道的な行為を目にして、人々は、求めていた政治とは全く正反対の社会がやってきたことを知らされていったのです。

新住民と旧住民

人々が、行き着いた先は、農村地帯でした。

そこでは、旧住民と新住民に分けられ、都会からやってきた人々は新住民として、旧住民の配下に置かれました。

クメールルージュの思想は、地方で農業に従事しているものが理想とする国民(旧住民)であり、都会で堕落した生活を送っていた人々(新住民)は農業に従事させることで再教育するというものでした。

国民を2分化し、片方を優遇し、もう片方は冷遇する。

集団を敵と味方に分けて、人々をコントロールするという手法を巧みに使っていたと言えます。

そして、農業用水の確保のために堤防や灌漑工事を強いられました。

現在、きれいに整備されている運河。(2019年11月 学校支援訪問に向かう途中にコンポントム州にて撮影)

これが、当時の過酷な強制労働に就いた人々の人力作業で作られたものと考えると、辛い気持ちになります。

新住民の人々は、炎天下の中14時間、たった一日2回のおかゆを与えられるだけで働き続けなければなりませんでした。

10リットルの水に缶1杯の米。

そのおかゆは、ほとんど水のようなものだったと言われています。

 

「生かさず殺さず」

 

これが、ポルポト政権下における幹部たちの合言葉でした。

個人が財産を持つことは許されない。
国民は全員農業に従事する。
生産されたものは国民に平等に配分される。
結婚も、オンカーの指示に従って強制的にさせられる。
家族の存在も、教育も、宗教も、すべて体制に反するもの。

これらが、ポルポトの目指す農業を主体とした原始共産主義の形だったというわけです。

粛清された人々

こちらは、タケオ州にあるキリングフィールドの資料館。

広場中央には、慰霊塔が立っています。

下は、当時を思い出して書かれた絵です。

こういったことが日常的に行われていました。

おびただしい数の白骨。

どれほど、無念な想いで亡くなられたことでしょう。

ただただ

「安らかに眠ってください。」

と祈るばかりです。

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