カンボジア工場労働者の最低月収
カンボジアの労働者について
プノンペンには、2020年現在およそ100万人の工場労働者がいると言われています。
プノンペン市の人口が200万人ですので、約2人に1人は工場で働いているという割合になります。
また、プノンペン(近郊も含めて)には、約2000の工場があります。これを、100万人の労働者で割ると、平均一つの工場では、500人の労働者が働いていることになります。
カンボジアで国が定める最低月収
カンボジアでは、法律で最低賃金(月収)が決められています。
2000年初頭、内戦終結後のカンボジアに各国から工場などの資本が導入されました。
当時の最低賃金は、月給40$。
それ以降、国民の生活水準の向上と伴って、GDPも上昇。
近年では、
2016年度の最低月給が128$(約1万4000円)
2018年 170$(1万8400円)にまで上昇
2019年 182$
2020年 192$
フンセン首相は、今後数年の間に223$(2万4100円)にまで高めると演説で公約しています。
GDPの上昇による経済成長のペースに合わせて、上昇してきた縫製労働者の賃金。
物価水準が違うため、単純な国際比較はできませんが、アセアン諸国に比べてまだ低い水準であることは事実。
給料が上がっているという事実に反して、実際には、労働者たちは、非常に苦しい生活をしています。
まずは、この状況を少しでも良くしたいと思うのは当然のことでしょう。
彼女たちには、将来に向けての夢もあります。
でも、そんな夢を遠ざけることがカンボジアで起こっています。
それは、
地価の高騰
なんです。
日本人ならまっとうに働けば手に入る家や車も、プノンペンでは夢の花。
中国資本の進出により、土地の買い漁りや転売が行われ、上のGDPのグラフの傾斜が2倍にもなりそうな勢いで地価が上昇しています。
賃金の上昇が雇用主を圧迫する
人件費が安く済むという理由で、こちらに生産工場を移転している海外資本は、現在大きな岐路に立たされています。
とりわけ、日本の企業は、税金面で好待遇が受けられるという理由で経済特区に工場を建てたはいいが、この労働者の賃金の上昇により、利益が圧迫され、赤字を出す企業も出始めています。
つまり、外国資本は、労働者にとって雇用の促進を実現している点でメリットがあるが、労働者の給与の上昇により雇用主側が撤退を余儀なくされ、雇用の場さえも奪われるという、相反する矛盾が働くことになるわけです。
これが、経済上のパラドックスです。
プノンペンに起きているインフレ
こちらに住んでいて、確かな実感があるのですが、今、プノンペンの物価がじわじわと上がり始めています。
特に、食材や生活必需品が、賃金の値上げ以上に上昇している印象があります。
価格は、売り主側がどのようにでも設定できますので、一つが値上げをすれば、他箇所も連鎖して値上げしていくのは自然なことです。
当然のことながら、低収入の人々は生活を切り詰めることを余儀なくされます。
豚肉は、昨年1kg=13,000リエルだったのが、今や20,000リエルにまで上がっています。
肉は高級品。
労働者たちは、野菜や小魚などが中心の粗末な食事を分け合って食べます。
食べる量を減らし、出費を抑えて、生活をしのぐ他になす術はありません。
工場の周辺では、朝の食堂がにぎわいます。
朝食を1,000~2,000リエルの安い外食で済ませる労働者たちが多いからです。