クメール式の割り算に関する考察
ボウ・ドウ・クン・チャイ
クメール語で加・減・乗・除の意味ですね。
この中で、カンボジアの子供たちが最もつまづくのが割り算(チャイ)です。
実は、私が教員養成校で指導していた時に学生たちが計算しているのを観察していて、あることに気づきました。
それは、
割り算が得意な学生は、足し算・引き算・掛け算までがほぼ完璧に身に付いているということ。
例えば、ある時に学生たちに100ます計算をさせてみたことがありました。
制限時間は5分。
すると、最も速い学生は、2分とかからずできたのに対し、対照的に3行ほどしかできていない学生もいたのです。
ある特定の数同志の組み合わせで鉛筆が止まってしまうのでした。
掛け算の100ます計算も同様でした。
この一桁同士の和と積がどの数の組み合わせでも瞬時にできることが、割り算がすらすらとできるようになる最低の条件です。
それに加えて、中高生には、11~19までの倍数計算も徹底的に覚えさせることが重要です。そうすると、割り算の仮の商を容易に見つけることができるようになるのです。
さて、次に、日本式とは違うクメール方式の割り算に触れてみます。
例えば、以下の計算をするときに、被除数の左に除数、上に商を書くのが日本式。
そして、除数の689を約700と考えて仮の商を立てて計算することを指導します。
はじめに7を立てて計算して、商をもう一つ増やせると考えて再度掛け算をします。
仮の商×除数を計算して、その積の整合性について、被除数から引き算をして出た答えを吟味するわけです。
つまり、
の仕組みを理解していることが大切なのです。
下は、クメール式の割り算のひっ算です。日本とは反対に、除数は被除数の右に、商は除数の下に書きます。
除数と仮の商の位置関係が上下にあることから、日本人でも慣れればこのやり方でも計算できます。
下のひっ算、きっちりと割り切れていますよね。
ところが、仮の商を6と置いたときに、上の計算が成り立ってしまうことがあります。
この誤りは、カンボジアでは多く見られます。
ポイントは、第一計算をした後の差の吟味にあります。
「5512の中に689はいくつ分含まれているか。」
つまり、差1378の数字から、まだ1つか2つ分含まれていると予想し、仮の商6では不十分だと気付くことが数学的センスと言えます。
こういう間違いをする生徒を出さないためにも、まずは教師が割り算の仕組みを理解し(包含除の考え方)、それをわかるまで指導することが大事だと思うわけです。
それと、カンボジアの教科書には、ところどころに数学的な誤りや不合理な表記が見受けられます。
下はグレード4の教科書。
順次、計算をしていき、差が0になるまで行う。これは、どの国も同じやり方です。
ところが、この08という表記。
日本では、上位桁が0の場合には、書き表さないというルールを教えながら、
「では、ひっ算の計算過程で、それに気づけるとしたらどこのポイントだろうか」
などと、生徒たちには考えさせます。
そうすることで、主体的な思考力が身に付いていくのです。
大学生でさえ、余りを「013」や「007」とか、書いていることもあります。
こういう細かなところまで、指導してこその数学。
初等教育で、最も大切にされるべき点です。
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