【電気も水道もない学校】スバイリエン州スロモー小学校訪問

2020年6月29日

電気も水道も通っていない学校。

初めてカンボジアの学校を訪問して、その施設の貧弱さに驚きました。

これが、私のカンボジア支援訪問の原点となっている初めの経験です。

その時のことを記事にしています。

期待に胸を膨らませて

2017年11月13日、今回、着任後の学生への指導のために、ベトナム国境近くにあるスロモー小学校を訪問する。

同行者は、サウシータ学長、CPのソブンナー先生、事務のサレットさん、そして私と通訳のソッコワさんの5人。

約束通りの朝6時半、集合場所のPTTC職員棟の前に全員集まった。

ソブンナー先生の運転する車に乗り込んで、まず向かったのは朝食のために立ち寄るスバイリエンレストラン。

トンレワイコー(ワイコー湖)のほとりにあるきれいなレストランだ。

こちらのお店は、多くが朝6時から営業している。

カンボジアでは、皆、早起きなのだ。

皆さんは、カンボジアの朝ごはんの定番であるクイテウ(米の麺)を注文した。

私は、昨日市場で買ったおいしいフランスパンを食べてきたので、コーヒーだけ頂いた。

会計は、シータ学長が、気前よく支払ってくれた。

こういう時には、年長者が当然のように支払うという習慣があるのだ。

今日、どんな光景が目に入ってくるのだろうと心が躍っているのを感じながら、再び車に乗り込んだ。

スロモー小学校に到着

1時間20分くらい、舗装されていない褐色のラテライトの田舎道を走っただろうか。

到着してみると、校庭では若い男の先生が体育の授業をしているところだった。

校長先生、副校長先生が笑顔でお出迎えをしてくれ、我々は、職員室で先生方に紹介された。

コピー機も印刷機もない、机と古い書庫だけが置かれたかなり古い部屋だ。

まず、気づいたのは、電気が通っていないらしく、かなり薄暗かったことだった。

上の写真でわかるだろうか。

屋根に1枚のソーラーパネルが設置されていて、室内に引かれた端子には先生方のスマホがつながれていた。

校長先生は、学校の概要、歴史、施設、子どもたちの様子などを話してくれた。

全部で7クラスある小学校で、午前中は低学年4クラス(幼児クラス含む)、午後は高学年3クラスの授業があるそうだ。

教室が4つしかないために、授業を午前と午後に分けているとのこと。

教師達も午前出勤の先生方と午後出勤の先生方に分かれるということになる。

数十数冊の図書室

次に、校内施設を案内された。

まずは、図書室。

手垢で真っ黒になった、表紙が折れたような本が数十冊、古いペンキで塗られた木製の棚に並べてあった。

校長先生は、とにかく本の絶対数が少ないことを強調されていた。

ソブンナー先生は、あなたが寄付してくれたらありがたいと言い、笑いを誘う。

カンボジアの歴史、健康のこと、有名な人、仏教のこと、物語、文化・習慣等についての本があるとありがたい。

3年生からはクメール文字が読めるようになるから・・・とのお話。

そして、各教室では、薄暗い中、子どもたちが真剣な表情で授業を受けていた。

教科書を一斉に音読する低学年の子供たちの元気な声も聞こえる。

不登校気味の子どもへの対応

校庭を足を引きずった障害のあるらしい子どもが母親に手を引かれ校庭を歩いていた。

薄汚れたぼろぼろのシャツに半ズボン姿である。

肌の日焼け具合とその身なりから、母親も農業労働者のようである。

どうやら、その子どもは教室に入りたくないようであった。

シータ学長は、優しく声をかけ、ポケットからお金(2000リエル)を取り出し、その子どもに手渡した。

このお金が何を意味するものかすぐには理解ができなかったが、持っている者がそうでない者に施しをするという慣習なのだろう。

学長であれば、そこそこの所得があることは理解できる。

その子どもは、気を取り直したのか、後で幼稚園クラスの教室に入って、先生の近くでお話を聞いていた。

これもカンボジアならではの光景だ。

老朽化した施設

本校舎の向かいには、使われていない古くて朽ち果てかけている校舎がある。

屋根が穴が開いていて、雨漏りするそうだ。

なるほど、中に入ってみると、屋根が苔むしていて、ところどころ空いた屋根の隙間から外の強い日差しが教室の床に注ぎ込んでいる。

床には、折れて壊れて使えない椅子や机が散乱している。

これは、1970年代からの内戦時代のものだろう。

現在、修理の予定はないそうだ。

校庭の隅には、手動の井戸があった。

くみ出した水は、そのままでは飲めないそうである。

教室にろ過機があり、それに通して飲むのだそうだ。

 

そのろ過機は、ユニセフの支援によるものであった。

昼休みにここへ当番の子どもが水を汲みに来ていた。

当番の生徒たちがこの作業を行うようである。

校庭の隅には比較的新しいトイレがある。

雨水をタンクにためて流す簡易式の浄化槽型のトイレだ。

アメリカのNGO団体からの寄付で、昨年建てられたばかりとのことだった。

授業を見学

9時から、新任の女性教諭スレイモン先生の授業を見学。

私は着任する前にこの学生は卒業しているために、直接指導してはいない。

3年生の算数、指導単元は「1000までの数」だ。

始めに、既習事項の2の段からの掛け算九九を復唱。

続いて、100の札を提示、一の位、十の位、百の位を確認。

ここで使っている教材も、すべて浮揚中身や段ボールなどで作った手作りのものだ。

きっと、PTTC(教員養成校)で、教わり、作成技術を身に付けたのだろう。

100のタイルを提示しながら数えていく。

そして、1000は100がいくつですかと質問する。

子どもたちを指名して、1000までを数えさせる。

「1000まで数えられますすか。」

グループのリーダーが前に出て発表。

お金を100ロイずつ手渡しして、子供が数を復唱する。

最後に、子どもたちに、宿題を出す。

「すべての数はいくつですか。」

1時間の授業を見学したが、まだ低学年の子供たちであるため、授業への集中がやや足りない印象があった。

スレイモンさんも、我々が見ている中、緊張しながらも授業をやり通した。

新年度が始まったばかりで、指導が充実していくのはこれからだろう。

ソブンナ先生指導講評

ソブンナー先生は、私が指導を行うカウンターパートの一人であり、高等学校で7年間の指導キャリアがある。

彼は、まずは単刀直入に感想を話した。

生徒を指導管理すること。しっかり勉強していない。座らせて学ばせること。ボールとかは持ってこさせない。食べ物は禁止。教材は後ろの生徒が見えないので、大きく作ったほうがいい。表に1から100まで自分で数を書き込むのではなく、それを生徒に書かせるとよい。

彼の指導は、どのようにしたら子どもが学びを深めるかという視点に立ったものである。

私は、彼の指導を指導監督する立場であるので、それを評価しつつ、学生には彼の指導を解説するような立場だ。

授業内容については彼がほとんど指導してくれたので、私からは、彼の指導の根拠性について触れ、あとは声がはっきりしていてよいことと黒板の字がとてもきれいだったことを伝えた。

良いところを強調しつつ、参観させていただいたお礼と今後の期待を込めて、感想をお伝えした。

初等教育においては、すべて学問の基礎となる学びの心構え、読み書き、解決的な思考をいかに身に付けさせるかが重要である。

カンボジアの将来が彼女の手によって育まれているのを感じた参観だった。

お昼ごはんをいただく

職員室に戻ると、副校長が、牛肉を切り、にんにくをつぶし、唐辛子をみじん切りしている。

聞くと、この村には食事ができるレストランがないそうだ。

私は、彼の見事な包丁さばきをじっと眺めていた。

カンボジアでは、男性もこのように上手に包丁を使い、調理するのだ。

カセットコンロで勢いよく、具材を炒め始めた。

30分ほど、おしゃべりをしながら、過ごしているうちに料理が出来上がった。

白ご飯は、村の保護者が学校に運んできてくれた。

日本で食べるのと変わらない牛肉のニンニク炒めと白ご飯。

魚醤を使っているので、独特の風味がある。

後でわかったことだが、牛肉はカンボジアでも高級品で最上位のおもてなしだ。

2人の新任の女の先生も、配膳や片付けのお手伝いをしてくれた。

感謝の心と思い描く決意

食事をおいしくいただき、いよいよ帰る時になった。

皆さんが職員室の出口で、「オークンロックルー」(ありがとう、先生)と手を合わせて、お見送りをしてくれた。

田舎の学校に勤める卒業生の今後の活躍を願い、こちらからも手を合わせ返す。

そして、帰りの車中で、いつかもう一度、この学校を訪れたいと考えつつ、田舎の田園風景を眺めていた。

きっと、その時には、両手にいっぱいの図書を抱えて・・・。


最後まで、お読みいただきありがとうございました。

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